位置情報取得のためのMCSCCみちびき衛星の利用
益田市の市道は山間部が多く、実際に走行してみるとGNSS(全球測位衛星システム)の中でも広く利用されている米国のGPS衛星を用いた位置検出だけでは信号を見失うことが多いことが分かった。
このため、実験車両およびパトロール車両には、山間部での位置検出に優れる日本の測位衛星”QZSS(みちびき)”を利用することにした。
QZSSは常に天頂付近にあるため、山間の道路で上空の視界が開けていない場所でも精度よく信号を捕捉し、位置を把握できる。
例として、下図にある日時の11基のGPS衛星の配置を示す。
図中の外周付近に位置する衛星は、水平方向まで視界の開けた場合にのみ観測でき、中心点近傍の衛星は遮蔽物に囲まれた場合でも天頂方向が開けていれば、観測できる。
図では、3、7、25番は地平線付近にあるため、自身から仰角15度以下を遮蔽するような山がある場合には見えなくなる。それでも、平地であれば8個の衛星が見えることになり、高い測位精度を期待できるが、仰角45度までの視界を閉ざされた山間部では、6、9、19番のみしか観測できず、精度低下や自己位置のロストを招く。これに対し、QZSS衛星を加えた場合を図 422 QZSSを追加した場合に示す。
GPS衛星を示す青いプロットは3つしか見えない状況だが、QZSSを示す赤いプロットが3基追加されているため、計6個の衛星が捕捉できることになり、十分に高い測位精度を確保できる。
日本は山がちであるため視界の開けた地形に乏しく、このように天頂近くに必ず測位衛星がいてくれるのは、測位精度の安定性向上に大きく寄与している。
図 4 21 米国GPS衛星の配置*1
図 4 22 QZSSを追加した場合*1
*1 : GNSS VIEW (https://app.qzss.go.jp/GNSSView/gnssview.html) を利用して作成
下記地図に2019年6月のパトロール車両の実際の走行軌跡を示す。
図中に紺色で示されている線は全てパトロール軌跡であり、水色の破線で囲まれたトンネル部分ではロストしているが、それ以外の個所では問題なく測位できている。
特に、赤い破線で囲った部分は、樹木が鬱蒼と生い茂った山深い地形を抜ける道だが、それでも走行軌跡をきちんと取得できることが確認できた。
2019年6月の道路パトロール軌跡*1
*1 : Mapboxを用いて作成 (https://www.mapbox.com/)
赤い破線部分の地形の例として、パトロール走行した際に撮影された写真を以下に示す。
一見してわかるように、左右方向から山が迫って上方の見通しが非常に悪いうえ、前方上方も草木が生い茂って空はほとんど見えない。
確認の為に、同様の位置をGoogle Map Street Viewで表示した画像も、示す。
この場所は、冬季でも山に挟まれて見通しが悪いことがわかる。
道路パトロール時に撮影された写真
Google Mapでの画像*1
*1 : Google Mapを用いて作成
MCSCC代表理事豊崎と内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室長にみちびき応用の説明(2023/9/13)